史実と伝説の接点……死して花に蘇生……グビジンソウ


IMG_1681グビジンソウとはヒナゲシの別名です。フランス語では「コクリコ」で、これも知られています。

このストーリーの出所は中国の伝説で、「サギソウ(3月25日掲載)」と同じく、史実と伝説が錯綜します。舞台は、かの有名な三国志の時代をさらに数百年遡る紀元前200年前後、春秋戦国の時代を記録した『史記』です。『虞美人草』は別に、夏目漱石の小説の題名でもあります。

戦国の時代ですから、項羽(こうう)と劉邦(りゅうほう)という有名な武将が登場します。二人は、初め助け合う仲間でしたが次第にライバルに発展します。

途中は省略しますが、優勢だった項羽は最終段階では劉邦の軍に囲まれます。「四面楚歌」(しめんそか。この四文字熟語は、まさにこの場面に発します)の中、常に膝元に置いた美姫、虞(ぐ)に今生の別れを告げ、歌を歌います。「山に勝る力に恵まれ、世間を支配下に置いた俺も、時に利なく致し方ない。虞ョ、ただお前にどうしてあげたらよいものだろう」。虞美人はその歌に合わせて舞い、別れを受け入れます。

項羽は残された兵数百騎を従え、囲いを突破しますが、結局は自害のやむなきに至ります。ここまでは史実です。ここで白い霧(あれ、雲なんでしょうか)がモクモクと画面を蔽い、伝説の世界にスイッチ……となります。

残された虞美人が本当はどんな運命に見舞われたかは、実はわからないのですが、二千数百年のちの今に伝えられる「伝説」では、自ら命を絶ったことになります。で、亡骸(なきがら)の跡にケシの花が生え出で、虞姫が流した鮮血に染められたような真紅の花を咲かせたということです。以来人々はその花、つまりヒナゲシを虞美人草と呼ぶようになりました。もっともヒナゲシは、白やピンクの花も咲かせはするのですが……。

なおヒナゲシに関しては、「ポピー」の名称との関連がややこしいです。3月20日投稿分をご参照ください。

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