塗りの基本 後編(とにかく上から下へ、慎重に)


前回の続きです。前回の記事とイラストに、ぜひもう一度お目を通してください。

  シャープなカットライン(重ね塗りしてもズレやカスレが生じない縁の線)や、デッサン線に沿って揺らぎのない輪郭を実現するために、葉や花弁、茎や果実などを塗る場合の要件を箇条書きに説明してまいります。

  1.葉を例にとると、例えばその葉が作品の中で斜めになっていようと横に描かれていようと、常に筆は上から下に運ぶように描きます。そのため、描く人に対して葉が垂直になるように、画用紙の位置をその都度動かします。つまり、画用紙は、今、何を、どの方向に塗ろうとしているかによって、目前の机の上でくるくる回されることになります。これをしないと、穂先が輪郭線を正しくなぞっているかどうか、両眼でしっかり捉えることはできません。

  2.葉の上端、左側の輪郭の内側(左利きの方なら、右側の輪郭の内側)に筆の穂先をあてがい、筆の腹(中央の太い部分)を紙に圧し着けるようにして水を押し出しながら、デッサンの輪郭線に沿うように、慎重に筆を引き下ろします。両眼は、下方にゆっくり移動する穂先の先端をしっかりと見据え続けます。穂の先端は、デッサン線を離れたり(三日月型の塗り残しが生じます)、デッサン線を乗り越えたり(ハミ出しが生じます)してはいけません。筆を下方にゆっくり描き下ろすやり方は、ちょうどお習字の先生が、「中」という漢字の中央の線を慎重にゆっくり書き下ろす運筆の構えに似ています。

  3.葉の縁を下端まで塗り終えたら、今度は画用紙を上下反対に回し、今塗り終えた葉の縁とは反対側の縁を、やはり上から下に塗り下ろしてまいります。とはいえ、紙は180°回しましたから、反対側とは言えまったく同じ向き、同じ姿勢で塗ることになります。

  4.「やめてくれ~!」と言いたい塗り方。

① デッサン線からのハミ出しが怖いため、筆の先端だけをデッサン線にあてがい、あらかじめ細い線で回りを囲ってしまうこと。これをやると画材は透明水彩ですから、上塗りをしても、囲い線と内側の色との相対的な濃度のギャップはいつまでも残ってしまうのです。

② 画用紙の上下を、自分の座る位置に合わせたまま完成まで作業を続けること。つまりくるくる回すことをしないで、上にご説明したことに真っ向から反逆するものです。左から右に弧を描いて動く腕と手の動きに支配されてしまったり、穂先と紙との接点を、両眼で確認し難いまま描き進めることになります。

③ ほうきでお庭の落葉を掃くときのように、筆の穂先で狙いだけ付け、サッサッサッと払うように塗ること。これをする人は意外と多い。これ、どこから来た塗り方でしょう。お化粧するときのブラシの使い方……?

カテゴリー: 塗り方   パーマリンク