アラ探し……?


s-IMG_3032ボクは教室で、ちょうど仕上げた生徒さんの作品を、承諾を得て写真に撮り、ブログに載せることがあります。その作品の良いところと悪いところについての評価を書き添え、同好の士の参考に供しようと思うからです。

で、この作品(カキ)ですが、困りました。描いたのはボクの教室に入って1年半の女性なのですが、写真は撮ったが悪いところが見つからない。なにより、ツヤツヤと輝く果実の表皮の力強い表現はどうでしょう。「わ~ッ上手!」。集まってきたギャラリーから声が上がります。まず明るい部分。左からの自然光に照らされている果実には、真上からも人工照明の光が落ちていて、手前部分にハイライト(光を全反射して白く光っている部分)を浮かび上がらせています。できるなら照明は、一つの方向から入射する単一光でありたいのですが、この作品の場合、手前の白いハイライトが無くなってしまったら何にもならない

しかもこの作品、二方向照明でありながら不自然さは微塵も感じられないのです。「じゃ、いいんじゃないですか~?」とギャラリーの表情。「でも……」「でも、何ですか? 先生」。「じゃ、ま、いいか」。植物画の本質にかかわるとは言い難い部分だと、こうなってしまいます。

次に果実の上側中央に出ている果柄の位置。本来は、手前端と奥の端とのまん中に突き出る果柄は、画面では作図上のド真ん中よりわずかに奥の方に立ち上がるのです。「物差しの使い方(2013・10・02)」で厳密に測れば、数字でも確認できます。遠近のある現実では、手前半分より奥半分の方が浅く感じられるからです。「この絵だと……見方によっては何となく……」「そんな……曖昧な……」「だってこれ、ちゃんとした真ん中に見えますよ? ねぇ。これでダメなんですか~先生?」「じゃ、いいか」。こんなことを繰り返していれば、先生の威厳も権威も薄らいで消えてしまいます。

で、やっと見つけました。果柄の小さな断面の形です。「あ、これ、まん丸じゃないか」。やや上から見下ろした果実の柄なら、水平に切断されているなら、断面はわずかでも上下にツブれた楕円形になっているはずです。「え~? こんな小さなところ?」。だって、これ取り上げなきゃ、言うとこなくなっちゃう、などはさすがにボクも言えません。「小っちゃい?」「こんな小さなところも問題になるんですか? 切り方次第で見え方だって変わるのに」。権威の蒸発を目前にして、ボクは困り続けます。

「アラ探し」は「粗探し」と書いて「人や作品の欠点を探し、強いてケチをつけること」だそうです。

このような粗探しは、植物画の場合やり易いし面白いもののようです。小さな都市伝説の植物画版ですが、ある大きな組織で、展覧会ごとに天眼鏡(拡大鏡)を手に会場を廻って歩き、非合理な点を見つけては制作者に、あるいは周囲の観覧者に報告して歩く有名なオジさんがいましたし、また製作者の側にも、自分の個展会場に虫眼鏡を山のように持ち込み、観覧者に使用を薦める人がいました。作品に、細部まで瑕疵一つないことの自信を示したかったのでしょうか。ボクも今、同じようなことをしているのでしょうか。違う、と思ってやっているのではありますが。

カテゴリー: 教室風景   パーマリンク