植物画の、避けては通れない技術――ボカシ


IMG_0802IMG_0668一般の水彩画と細密画である植物画は、技術的には地続きで、用具ともども本質的には何も変わると
ころはありません。しかし地続きとは言え平坦ではなく、段差、勾配があります。今回は「ボカシ(グラデーション)」を取り上げます。ボカシとは、例えばリンゴを描く場合、光が当たる片側から一番奥まった反対側にかけて、「赤」という色とは別に、明るさから暗さに至る「だんだん」とか「少しずつ」とか表現される明暗の変化があります。これの描写技術がボカシです。
またリンゴの場合、表皮には明暗とはまったく別の、色の変化もあるかもしれません。表皮の黄緑色を帯びた部分から深く色づいた赤い部分にいたる途中、「少しずつ」「だんだん」「次第に」)緑の色はアップルグリーンからクリムソンに向かって変化し続けます。
もちろん普通の水彩画でも同じことです。リンゴに限らず、細い花の茎から葉の葉脈と葉脈との間まで、目に見える世界は陰と影で半分ずつ占められ、わずかな曲面でもあればすべて「だんだん」「少しずつ」……変わる……ボカシ表現が必要になります。
ただ、普通の水彩絵画と細密画である植物画とではかなり異なっています。描く対象の大きさ、広大・狭小さに応じて描く明暗、色の移ろいも、求められる大胆さ、繊細さという点で変わってきます。だからそれに応じた表現技術もあるわけで、植物画の場合は、この「ボカシ」習得のところで初心者は足踏みし、少なからず挫折も見られるのです。
ところで、名の知られた教室や植物画指導団体から私の教室に来られた入会者の中に、往々にして「え? ボカシ……って、何ですかそれ」とか、「前のところ、1年少しいたんですが、それ初めて聞きました」など、信じがたい状況が存在するのです。まるでボカシについては、技術事項としては何も教えてはいないかの如くなのです。とても不思議なのです。なぜでしょう。ただ、ボカシの説明は簡単なのですが、この技術の伝達はとても説明しにくいのは事実です……が。

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