カエルの話 


7月26日、ボクが数日家を離れる前日ですが、ベランダにいるカエルを見つけてかなり驚きました。所狭しと並んだプランターや鉢の間に挟まるように両手を突き、じっと動きません。

図鑑を見ると、どうやらアカガエルらしいと見当が付きました。赤というよりは暗い茶色で、黒い斑点があります。小さいところからして子ガエルかもしれません。地上や樹上に住むそうです。

いくら高いところが好きとはいえ、ボクの家はマンションの6階です。第一、数㎝に満たないカエルが、どうして地上20余mにもなるはずのこんなところにいるのでしょう。ここまで来るには、エレベーターは無理でしょうから階段でしょうが、ボクは運動のためによく階段の上り下りをするので知っているのですが、踊り場も含めて97段あります。これを一段一段、目的があるかのごとく飛び上がり、一息ついて次のステップにまた飛びつき……これも考えにくいです。

カミさんの推理はこうです。おそらく卵の状態で、なぜか偶然、鉢の一つに落とされたのだろう。やがて卵から孵り、数日を経て今日ここに居る……。

食事をしてまたカエルを……とベランダを覗くと、どこかに消えていました。

ボクが出先から帰った日、カミさんが待っていたようにカエルの後日談を報告してくれました。二日ほど前ベランダで鉢に水を遣っていると、例のカエルが立て込んだ鉢の間に場所を変えていたのだそうです。そこで手を伸ばすと、それまで微動だにしなかったカエルが突然跳躍した。で、カエルは跳躍した勢いのままフェンスの細い金属の柵の間を抜け、空中に……。

卵のまま居付いたのだとすれば、カエルにとってはこれが生まれて初めて目にする外界であり、はるかに下界を見下ろす果て知れぬ空間の真っただ中と知らされた瞬間だったに違いありません。その驚愕、驚天動地はいかばかりのものだったでしょう。

アッと叫んで手摺に走り寄ったカミさんは、慌てて首を外に突き出し、下界を探したのだそうですが、何も見えなかったということです。次第に増加する落下速度、それと空気の激しい摩擦音の中で、カエルは何を思ったことでしょうか。

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