万葉集シリーズ(2) 夫を防人(さきもり。国境防衛兵)として送り出す妻の歌


【防人に行くは誰(た)が背(せ)と問ふ人を見るが羨(とも)しさ物思ひもせず】(昔年防人妻)第二十巻4425番

妻・妹・愛する女性を妹(いも)、夫・兄 ・愛する男性を背(せ)と言います。「妹背を契る」など……。歌の意味は「防人として送り出されるのはどなたのご主人なの?」と、他人事のように尋ねる人が羨ましい……。

7世紀、朝鮮半島南端・百済に、日本は兵を派遣しましたが、白村江の海戦で惨敗しました。以後日本は、同半島経由による唐(中国)の追討軍の襲撃を恐れ、北九州沿岸に海岸防備の兵士を数千~数万規模で常駐させました。これが防人(さきもり)です。防人の兵士は主に北日本の農民であり、役人によって徴兵されました。武器と食料は自前で、3年の任期を終えた退役兵は、遠く関東・東北まで自らの足と費用で再度長旅を行うのですが、途中で野垂れ死にをする者が非常に多かったといわれます。だから、列島の北部から遥か西南方の防衛戦線まで夫を送り出す家族は、年代的には若妻と幼児たちが多かったはずで、夫の旅程の苦労を思いやり、残される自分たちの心細さに耐えて死別さえ覚悟の上での別れでした。万葉集には、防人周辺の歌がとても多いのです。

映画「二百三高地」の主題歌「防人の詩(うた)」(さだまさし)は、もはや映画を離れた独唱歌曲として聞く人の心に染み入る歌になっています。

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